「少子化対策」
「少子化対策」
2015年4月 読売新聞より
少子化の流れに歯止めをかけるには、若い世代が希望通りに結婚や子育てができる環境を整え
ることが重要だ。政府は、新たに決定した「少子化社会対策大綱」で、今後5年間を集中取り組み期間と位置付けた。着実に実行せねばならない。
1人の女性が生涯に産む子供の平均数を示す合計特殊出生率は、2013年時点で1・43だ。やや改善傾向にあるが、人口を維持できる2・07にはほど遠い。大綱が指摘する通り、「社会経済の根幹を揺るがしかねない危機的状況」と言えよう。
注目されるのは、男性も育児や家事を担うよう、大綱が促した点だ。「男性の参画が少ないことが、少子化の原因の一つ」と強調し、長時間労働の是正など「働き方改革」を重点課題に掲げた。日本の男性が育児・家事に費やす時間は、世界的に見て最低レベルにある。
6歳未満の子供を持つ男性の場合、1日平均1時間7分で、欧米の3時間前後に比べて、大きく見劣りする。厚生労働省の調査では、夫の育児・家事時間が長いほど第2子以降の生まれる割合が高い。男性の育児休業取得率を今の2%から13%に引き上げる。妻が出産した際の夫の休暇取得率を8割とすることも打ち出した。共働きが増える中、家事・育児を女性任せにしていては、出生率の回復は望めない。短時間で効率よく働き、仕事と生活の調和を図る。
政府が掲げる「女性の活躍推進」の上でも重要な視点だ。企業の意識改革が求められる。保育所の増設など、子育て支援の充実は欠かせない。2015年4月に始まった「子ども・子育て支援新制度」で、待機児童の解消を確実に実現してもらいたい。大綱は、若い世代への結婚や出産の支援も重点課題とした。
結婚や子育てを望んでいても、経済的な事情であきらめる人が増えた。低賃金で雇用が不安定な非正規労働者の増加などが背景にある。
男性の既婚率は、正社員と比べて著しく低い。非正規労働者の処遇改善や正社員への転換支援が必要だ。
1947年以降の日本の出生数と合計特殊出生率 |
||
年 |
出生数(人) |
合計特殊出生率 |
1947 |
2,678,792 |
4.54 |
1950 |
2,337,507 |
3.65 |
1960 |
1,606,041 |
2.00 |
1970 |
1,934,239 |
2.13 |
1980 |
1,576,889 |
1.75 |
1990 |
1,221,585 |
1.54 |
2000 |
1,190,547 |
1.36 |
2005 |
1,062,530 |
1.26 |
2010 |
1,071,304 |
1.39 |
2011 |
1,050,806 |
1.39 |
2012 |
1,037,231 |
1.41 |
2013 |
1,029,816 |
1.43 |
2014 |
1,001,000 |
未算出 |
※左の表から分かること。
①出生率は改善しているが、出生数は、毎年減少している。
②2014年の出生数100.1万人は、過去最低。出生率は未算出。
③2014年の死亡数は、前年比1,000人増の126万9,000人。出生数か
ら死亡数を減じた自然増減は、マイナス26万8,000人。自然減は8
年連続で過去最大の減少幅。
④今から55年ほど、半世紀ほど前に比べ、
出生数は2/3以下になっている。