就業規則変更に伴う事項について

就業規則変更に伴う事項について

労働契約法(平成19年法律第128号・抄)

(就業規則による労働契約の内容の変更)
第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

就業規則の変更に係る手続(第11条)

(就業規則の変更に係る手続)
第十一条 就業規則の変更の手続に関しては、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第八十九条及び第九十条の定めるところによる。
趣旨
就業規則に関する規定は、労働契約法第2章のほか、労働基準法第9章にも定められています。使用者は、就業規則に関して、労働契約法の趣旨や内容を理解するとともに、労働基準法の規定についても遵守する必要があります。

特に、労働基準法第89条と第90条に規定されている就業規則に関する手続は、労働契約法第10条の法的効果を生じさせるための要件とはされていませんが、就業規則の内容の合理性に資するものであります。

このため、労働契約法第11条に就業規則の変更の手続については、労働基準法第89条と第90条の定めるところによることが規定され、それらの手続が重要であることを明らかしています。

就業規則の変更の手続について、労働基準法は次のように規定しています。

労働基準法第89条によって、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、変更後の就業規則を所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないこと
労働基準法第90条により、就業規則の変更について過半数労働組合等の意見を聴かなければならず、1.の届出の際に、その意見を記した書面を添付しなければならないこと

労働基準法

(作成及び届出の義務)

第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

一 ・・・始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
二 ・・・賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
三 ・・・退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
三の・・・退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
四 ・・・臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
五 ・・・労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
六 ・・・安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
七 ・・・職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
八 ・・・災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
九 ・・・表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
十 ・・・前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

(作成の手続)

第九十条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない
② 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない

 

労働基準法第89条と第90条の手続が履行されていることは、労働契約法第10条の法的効果を生じさせるための要件ではありません。

しかし、使用者による労働基準法第89条と第90条の遵守状況は、同条の合理性判断に際して、就業規則の変更に係る諸事情として考慮され得ると考えられます。