給与制度について考える2

●一般的な手当の種類と性格

1)職務・職能・役割手当(基本給だけでは賄えない特定の職能に対応する手当など)

2)生活補助手当(生計費充当)

3)勤務手当(特殊な勤務、作業に対応する手当など)

4)奨励手当(業務促進、勤務等江尾促進する手当など)

 

従業員の生活面と仕事の実情により、基本給でカバーできない要素がある場合に、基本給を補完する意味で臨時調整的なものや特定の対象者に限定して支給されるものを「手当」といいます。以下一例。

(1)職務・職能手当 

(ア)役職手当(管理職手当)
役職手当は、「管理・監督の地位にある者に対して、その責任の大きさなどを償うために支給する手当」です。管理職を対象とするものは「管理職手当」、非管理職を対象とする場合には「職責手当」、というように区分する場合があります。
管理職手当には次のような支給理由があるといわれています。
①非役職者と比較して、その職責内容が一般に高度で複雑であり、また責任が重い
②労働基準法第41条により、管理者(使用者)については労働時間の規定についてその適用が除外されていることから、時間外労働に対してその都度時間基準で手当を支給せず、予め一定時間分を定額で支給する
③部下指導や人間関係についての問題の責任をもたせる場合、それによる有形・無形の負担が必要
④社内外を通じて役職者としての体面を保持するための出費が必要
なお、残業手当(時間外手当)の支払い対象外とする意図から、係長、主任などの下位役職者に対して役職手当を支給する例もありますが、社内では役職者と位置づけていても、実際には労働基準法第41条第2号に規定する「監督若しくは管理の地位にある者」に該当しないことが多く、その場合は残業手当の法的な支払い義務を免れることはできませんので注意が必要です。
非管理職の残業手当(時間外手当)に見合う、あるいはそれを上回る何らかの給付をもって処遇しなければ、誰も役職を望まなくなるという事態になりかねません。重要なことは、責任の大きさと比較して手当の額が小さいといった不満感を持たれないように、仕事の実態を見極め、世間相場を睨みながら支給理由を満たすにふさわしい適切な水準を維持することです。

参考  労働基準法第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
1.別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
2.事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
3.監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

(イ)営業手当(外勤手当)
営業手当(外勤手当)は、「社外で営業活動に従事する従業員に必要となる金銭的負担に対して支給する手当」とされています。また、これに営業業務に対する奨励という意味で金額を上乗せする企業もあります。
なお、残業手当(時間外手当)を定額で支払おうとする意図から、一定時間の残業を行なったものとみなして、それに相当する金額を営業手当に含める例もありますが、社外で業務に従事し労働時間が算定し難いケースは携帯電話等が普及した現在は稀であり、実際には労働基準法第38条の2に規定する「みなし労働時間」に該当しないことが多く見受けられます。
そのような場合は実際の残業時間に見合う、あるいはそれを上回る残業手当(時間外手当)を支払う必要がありますので支給額を決める際には注意が必要です。

参考  労働基準法第38条の2(時間計算)
労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。

(ウ)特殊作業手当
特殊作業手当は、「通常の作業環境とは異なる環境に置かれる作業、あるいは特殊な作業に従事させる場合に支給する手当」です。高熱、寒冷、危険、有害など肉体的に特別な負荷や精神的苦痛などを伴う作業に従事する場合などが支給対象とされます。

(エ)特殊勤務手当
特殊勤務手当は、「通常の勤務としては規定されていない特殊な勤務につく場合に支給する手当」です。公務員の場合には一般的な手当となるケースが多いのですが、民間企業では特別扱いするケースは多くないと考えられます。

(オ)技能手当(資格手当)
技能手当(資格手当)は、「企業が必要とする特別の技能や資格を有している者に対して支給する手当」です。
基本給の決定要素に技能の程度を含める場合には、改めて手当を設定する必要性は生じません。
技能手当(資格手当)の支給理由としては、
①企業内の技能レベルを高く維持する目的から、特定の技能や資格の取得を促す
②業務の中で技能資格や特定の免許が活用されている者に対して、その技能を賃金に反映させる
などがあります。

(カ)精皆勤手当
精皆勤手当とは、「出勤の促進のために支給する手当」です。しかし、最近は所要などで出勤できない場合に有給休暇を利用する人が多くなり、ほとんどの人が皆勤になっているようですので、精皆勤手当を設定する必要性はなくなってきています。

(2)生活補助手当

(ア)家族手当(扶養手当)
家族手当(扶養手当)は、「生計を一にしており、主としてその収入により生活を維持している家族を扶養している従業員に対してその生活費を配慮して支給する手当」です。
家族手当(扶養手当)に対する労務政策上の考え方は、企業によって異なります。
仕事に直接関係のない手当であるとして家族手当(扶養手当)を廃止し、仕事を基準とする賃金部分に置き換える企業も出てきていますが、残業手当(時間外手当)算定の基礎賃金額から除外される手当であるため、敢えて存続させる場合もあります。

最近の新しい手当の傾向としては、高校生、大学生の子供の教育費が高額になることを配慮し、『子女教育手当』を新設する企業が多くなっています。

また、誕生日お祝金なども有効的ではないでしょうか?
従来、生活費を考慮する上で基本給とあわせて検討される重要な手当として位置づけられてきましたが、①労働者のライフスタイルの多様化、②女性の社会進出、③晩婚化、④シングル層の増加などにより、従来の男性従業員を中心とした世帯形成に合わせた賃金管理は限界が見えてきたといえます。

(イ)地域手当(物価手当、寒冷地手当、都市手当)
地域手当は、「勤務地が広域にまたがる場合に、それぞれの勤務地の経済的・地理的条件や生活様式の相違による生計費の差を調整するために支給する手当」です。勤務地手当、都市手当、物価手当、寒冷地手当などと呼ばれることもあります。
特殊な地域事情に配慮することによって、従業員の獲得と転勤などによる人員配置を効果的に進める目的で支給する場合が多い手当です。あくまでも本拠地からの別居等を考慮したものであって、現地採用者には支給されないのが普通です。

(ウ)住宅手当 住宅手当には、一般的には次のような支給理由があります。
①寮・社宅などの住宅施設のある企業で、住宅以外に居住する者に対して、社宅居住者との生計費上の均衡を図る
②寮・社宅のあるなしにかかわらず、住居費支出による生計費の圧迫を緩和する
③住宅事情の悪い地域に所在する事業所では、人材の確保、配置転換、転勤などをスムーズに進める
支給額の設定方法としては、借家・持家等の住居の種類別、世帯主・非世帯主の別、扶養家族の有無などの条件を設定し、その条件別に一律定額制をとるものもあれば、役職、資格、年齢、勤続年数などの条件を設定する場合もあります。

(3)その他の手当

(ア)通勤手当
通勤手当は、「労働契約を履行するための必要経費として支給する手当」です。必要経費ですから、実際に通勤に使用する交通手段、距離、時間、ガソンリン代などの費用を算定して支給額が決められますが、通勤定期券等を現物支給する場合もあります。

(イ)借上手当
借上手当は、「従業員が個人で所有する物品等を業務に使用する場合に、実費弁償として支給する手当」です。

 

など一般例を上げました、愛眼と比較してみましょう。