同一労働同一賃金について
同一労働同一賃金とは
同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。
同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。
派遣労働者の同一労働同一賃金については、こちらをご覧ください。
同一労働同一賃金の実現に向けて
同一労働同一賃金ガイドライン
本ガイドラインでは、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差は不合理なものでないのか、原則となる考え方と具体例を示したものです。
労働者のメリット・デメリット
労働者のメリット
まず労働者側のメリットとして年齢や勤続年数に関係なく、仕事ができる人材が優遇され活躍できる場所が増えることです。正社員の人と同じ仕事を任されている非正規労働者のやる気に繋がり、賃金も増えることで生活に余裕がでてきます。
仕事の成果が給料や待遇で返ってくることで、仕事を辞めにくくなることやスキルアップに意欲的になることにも繋がるでしょう。そういったメリットで会社全体の雰囲気もよくなり、職場環境の改善にも繋がり相乗効果も期待できます。
労働者のデメリット
正社員の給料が下がる可能性があることがデメリットとしてあげられます。仕事ができる人、できない人の明確化が行われ、苦手な仕事を振られた人にとっては自信喪失や仕事に対する意欲を失うことに繋がるでしょう。しかしこういったデメリットを解消するために労働者にあった職場配置を考えるなど、職場環境を整えることで改善することができます。
使用者のメリット・デメリット
使用者のメリット
正社員はもちろん、非正規労働者のモチベーションアップに繋がり会社全体の業績アップや効率化に結びつくことも考えられます。仕事にやる気が出て、退職する人も少なくなる可能性があり、労働者が長期的に在籍しているとより退職しにくくスキルの高い人材が豊富に揃うことになるでしょう。
そういった人材を手放さないためにも事前からの準備と法改正に適応していくことが大切です。そのためにも労働者の意見や相談を聞き、適材適所の人材配置を考えることで対策になります。
使用者のデメリット
非正規労働者の給料が上がり人件費が以前より高くなることがあげられます。それによって予算などのコスト削減に追われることになります。正社員の給料を下げると正社員のモチベーション低下に繋がり職場環境が悪い方向に向いてしまうので注意しましょう。そうならないためにも法改正が行われる前から事前に準備し、対策案を練っておくことが必要になってきます。
会社の全社員に周知し、労働環境の改善を会社全体で行うことで良い方向に向かうよう努力する必要が出てくるかもしれません。事前に正規労働者と非正規労働者の給料のバランス調整ができるようなシステムを作っておくことで対策になります。
同一労働同一賃金が実現した場合の企業の対応
法改正により同一労働同一賃金が実現した場合、企業はどのような対応をすればいいのでしょうか。現在の日本の雇用形態ではなかなか適応が難しいのが現状だと思います。もともと欧州の雇用形態を参考にして作られた「同一労働同一賃金ガイドライン」は欧州の雇用形態だからこそ実現しやすいものになっています。
欧州では、会社に採用される際にこの仕事をしてもらいたいので募集していますと、仕事内容を明確に提示していることが多いです。それに比べて日本では会社の大まかな事業内容は提示されていますが、実際に入社してみないと配属先も仕事内容も明確にわからないことが多いです。
加えて配属先も労働者が決めるのではなく、会社側の裁量で決めることが大多数になります。その代わり日本では一度雇用されると会社の経営が破綻しない限り、雇用は安定して継続できることが多いです。そういった背景を考えながら、企業側は同一労働同一賃金への対応を考えなければいけません。
正規労働者と非正規労働者の仕事を明確にする
まず正規労働者と非正規労働者の仕事の区分を明確にすることが1つの対策としてあげられます。正規労働者の待遇や給料に対して非正規労働者の受けられる割合はおよそ60%程度といわれているので、正規労働者の仕事を100%とすると非正規労働者の仕事は60%程度に分けるなどすることで今まで通りの給与形態を保つことができるでしょう。
また労働環境を変えていく場合、仕事意欲がある非正規労働者には、正規労働者と同じ仕事量にすることで非正規労働者の待遇も正規労働者と同様にする必要が出てきます。そうなると正規労働者と非正規労働者の仕事量や責任に対する対価が、適切に支払われているか調査する必要があります。調査する機関やシステム案を事前に準備しておくことで適切な対処ができることでしょう。
従業員の仕事に対する生産性の向上や効率化が見込めるなら人員削減や、正規労働者の給与減額を視野に入れる必要もあります。もちろん正当な理由がなければ実施できませんが、正当な理由がある場合はきちんと従業員に提示し納得してもらえるように従業員のケアに努めることが必要です。
法改正によって同一労働同一賃金が実現した場合、このように数多くの対処に追われることになります。焦らず適切に対処できるように事前準備をしっかりして先の構想を見据えることが必要になってくるでしょう。