不当労働行為 理解しておくべき実例

SSUA研修会で、「不当労働行為」について学んできました。

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「これって不当労働行為?」 実例と解説

【問題1】○(不利益扱い)
営業部長F氏が「組合の執行部である限り店長にはなれない」と発言。
 組合執行部であることを理由に、不利益な扱い(ここでは、店長になれないという不利益)をすることは、不当労働行為の「組合活動をするによる不利益な扱い」に該当する。
ちなみに、F営業部長が「店長なんだから組合執行部なんかに入るな!」と言ったら、同じく 不当労働行為の「支配介入」に当たる。(パワハラで訴えることもできるのでは?)

【問題2】○(支配介入)
A社長が書記長に「組合なんかやっているから店の業績が悪いんだ」と営業部会議後の懇親会の席で「冗談だ」と言いながら発言。
明らかな不当労働行為(支配介入)。組合活動をしていることが評価に反映するとなれば、不利益扱いとも取れる。また、「酒の席だから・・・」と労働委員会で言ったI部長がいたが、労働委員会の委員に「当たり前、何を言っているのか。」とたしなめられた。「冗談」であってもダメ。

【問題3】☓
営業時間の問題で組合が労使協議会を申入れたが、会社は拒否した。しかしながら、団体交渉
を申入れたら、会社は受けた。
 (少し難しい)労使協議会は団体交渉と同じように「団交権としての応諾義務」が発生するが、
このケースでは、団体交渉については受けているので、団交拒否としての不当労働行為は発生しない。組合が労使協議だけを申入れて、そのまま会社が拒否し続ければ不当労働行為となる
恐れがある。

【問題4】○(支配介入)
A社長は、組合員からの「組合費が高いんです」という相談に乗り、委員長に対し、「パートの
組合費は高いんじゃないの?少し低くしたらどうか。」と言ってきた。
 組合員からの相談に乗ることは別に構わない。(組合員=従業員と言う立場で考えれば当然であ
る。)それを「高いんじゃないの」と言うまでは社長の感想でしかないので構わないが、「低く
したら」と言うと支配介入になってしまう。ただし、裁判例では、感想でも、言ってしまえば
支配介入と捉えられたケースもある。

【問題5】○(経費援助)
組合定期大会の日は、会社の取り計らいにより「出勤扱い」として会社が許可している。
 法律は、労働者が就業時間中に会社との協議または交渉において賃金を支払うことを認めているが、組合行事(原則、会社には関係なし)においては、その時間中の賃金を支払うと経費援助となる。組合は貰っているだけだから「良いじゃない!」という考えもあるが、会社が許可することが不当労働行為となり、第三者から見れば「違法」となります。

【問題6】☓
会社の新入社員研修会で、組合からの依頼で組合の「加入届」をT人事課長が配布回収した。
 組合の運営に会社が関わっているので「支配介入」とも思われるが、このケースは組合からの
依頼で会社が「加入届」を配布しているので支配介入にはならない。ただし、今は労使の信頼
関係が成立していると思われるので大丈夫であるが、会社に支配介入の意思があればできてし
まうようなことは避けるべき。組合の役員が同席する等の対応が必要である。

【問題7】☓
組合結成時に組合団結を目的に「団結バッジ」を付けて店頭に立ったことで、就業規則に反すると懲戒処分した。
 就業時間中の組合活動は会社の許可を受けずに行えば組合の正当な行為とは言えない。ただし、
争議行為(スト権を確立→ストライキ)の一部ということであれば、懲戒処分したことは支配
介入となる。つまり、不当労働行為であるかないかは、職務の性質・内容、当該行動の態様な
ど諸般の事情を勘案して判断することになる。

【問題8】○(不誠実団交)
賃金交渉で組合と未だ妥結していないのにも拘らず、会社が勝手に新賃金についての「お知らせ」を社内で配布した。
 未だ妥結していない事項(賃金交渉だけでなく、新人事制度や諸手当改定等)に関し、会社が
一方的に妥結したごとく勝手に社内発表してしまうことは、不誠実団交に当たる。また、一般的に会社が「お知らせ」を勝手に出す場合は、組合批判とも取れる内容を同時掲載するので、
そうであれば、支配介入にもなる。一方、組合も組合案等を出して妥結する努力も必要。

【問題9】△(支配介入)
会社は、今まで組合費をチェックオフしていたが、賃金交渉で委員長が社長の気に障ることを
言ったため、会社は組合費のチェックオフを打ち切ってしまった。
 合理的な理由がなく会社が一方的にチェックオフを打ち切ることは不当労働行為(支配介入)
となる。ただし、その組合が過半数組合でなかったり、チェックオフ協定を締結していなかっ
たりした場合は、不当労働行為ではないとする判例もある。個人的には、合理的理由のない打ち切りは、団結権の侵害と組合財政の弱体化を意図しているので不当労働行為と考える。

【問題10】☓
Aユニオンは組合事務所を貸与されているが、地方での職場集会を開くために、閉店後の店舗を利用する目的で会社に使用許可を求めたが、会社はこれを拒否した。
会社が店舗の利用を不許可とすることは「権利の濫用」とは言えず、不当労働行為ではない。
(池上通信機事件)
ただし、会社が組合事務所も貸与していなかったり、従来から貸していた閉店後の店舗について、組合活動を妨害する目的で貸与しなかったりした場合は、不当労働行為となる。

【問題11】○(支配介入)
M店長(組合員)が、部下であるS(組合執行部)に対し、「最近、組合活動による休みが多いね。Sが休みの時にはB店から応援に来てもらっているからB店から文句言われるよ。そろそろ、執行部を降りろよ。」と言った。
 明らかな組合運営に対する支配介入。店長(組合員)が言っていることに引っ掛かるかもしれないが、店長の行為は会社に帰責(責任を負う)され、会社についての不当労働行為が成立する。また、この件の問題は、組合活動ではなく、適正人員の不整備が問題である。

【問題12】☓
S社では、「労使協議会に出席する組合三役は就業時間中であっても賃金を差引かれない」という慣行がある。
 労働者が労働時間中に会社と協議、交渉を行う場合には、その協議、交渉のために労働者が職場を離れて就労しなかった時間の賃金を会社が支払っても経理上の援助とはならない。(3号)会社の組合に対する経費援助の「例外3点」は、上記以外に「福利厚生の目的に限定した寄付」(組合イベントへの寄付、災害見舞金等)と「事務所の貸与(備品もOK)」である。

【問題13】○(不誠実団交)
G労組の一時金交渉で、「個別賃金データを開示せよ」と会社に言ったら、会社は「個人情報なので開示できない」と言った。
個人情報保護の観点からすれば、会社が拒否することも考えられなくないが、組合員が開示に同意していれば会社拒否に正当な理由がなくなる。組合内部での「プライバシーポリシー」を作成することや会社との「個人情報の共同利用の覚書」等を締結する必要が有る。賃上げ結果の証明には個別賃金データは必要不可欠であり、個人名を伏せた形でも開示させるべきである。

【問題14】○(不誠実団交)
 一時金交渉の際、公開企業ではないので、経営数値を求めたら、「会社の情報を漏らすヤツがいる」という理由で開示されなかった。
組合の賃上げ、一時金要求に対する団体交渉で、会社は具体的な資料を提示することなく満額回答を拒否し続ければ、誠実に団体交渉に応じなかったとして不当労働行為となる。もちろん、満額回答であれば、資料等の提示はいらない。また、インサイダー取引とよく言う経営者がいるが、インサイダー取引とは、株取引を禁じているのあり、労組への情報提供を禁じているのではない。経営状況を開示せず、「組合の要求根拠を言え」と言われるのも不誠実団交。

【問題15】△(支配介入)
定期大会終了後の懇親会中に営業部長から書記長宛に電話が入り、「組合で来てるんだって?これから業務ミーティングするから本社に来て!」と急遽呼び出しがあった。
 本来であれば断れば良いのだが、断りきれないような言い方をしたのでしょう。これは、営業
部長が組合懇親会を邪魔する意図があれば支配介入であるが、そうでなければ、単純な労基法
違反であり(三六協定違反→休日労働違反→強制労働違反)、不当労働行為とはならない。

【問題16】○(団交拒否)
 A労組では、まだ結成間もないことからSSUAが団体交渉に入ることになり、A社に申し入れた。これに対し、A社は「上部団体の入る団交は受けない」とのこと。
明らかな団体交渉拒否。上部団体だけの申し入れも断ることはできない。「保留」「見送り」も同じ。また、交渉する冒頭から「今回の賃上げはできない。」「協定は締結できない」と宣言することも不誠実団交となる。交渉権限がなく「社長に聞いておく」という回答も不誠実団交。常に社長が出なければならないことはないが、局面によっては社長が出ないとダメ。

【問題17】☓
ユニオンショップ制度の破棄をK人事部長がY委員長に提案してきた。もちろん拒否!
 ユニオンショップの破棄は、労働協約で締結されているので、一方的な破棄は出来ないが、組合に対し、提案すること自体が不当労働行為とは言えない。

【問題18】○(報復的不利益扱い)
Aグループユニオンが労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てたところ、執行部10名中、
9名が遠隔地への転勤リストに名前が挙がった。転勤予定者は従業員1,000名中10名だった。
労働委員会への申し立てを理由とした不利益扱いは不当労働行為(報復的不利益扱い)である。今回のケースはあからさまに組合の弱体化を意図していると判断できる。

【問題19】○(支配介入)
M社のK人事部長が組合のH委員長に対し、「今年の労働条件改定交渉では、昨年要求した有休の計画付与は要求しいへんのね?(関西弁)」と言った。
大きなお世話。組合の組織決定に対する会社の組合内部干渉であり、支配介入で不当労働行為。

【問題20】○(支配介入)
M社のK人事部長がH委員長に対し、「週20時間以上のパートは組合員にすべきだよ。」「そう思わへん?」「パートが組合員になったら何か特典付けないとね。」と言ってきた。
 大きなお世話。組合組織に対する支配介入。組合員資格をどのような範囲にするのか、どんな者を非組合員とするのかという組合組織に関する事項は、その組合が自主的に決めるべき事項であり、会社の介入を許すべき性質のものではない。