60歳からの働き方を考える

「保険に加入する年齢の上限」から考える

  • 60歳からの働き方
    60歳からの働き方を考えると・・・
    定年後も同じ会社に、嘱託社員として再雇用された3人の男性が、定年前と同じ仕事をしているのに、賃金が下げられてしまうのは、労働契約法に違反していると争った裁判の判決が、平成28年5月13日に東京地裁から出されました。

東京地裁は3人の男性の主張を全面的に認め、正社員と嘱託社員の賃金の差額を、会社側に支払うよう命じました。

この判決が確定すれば、60歳以降も働き続ける方の労働条件を、改善させる可能性がありますが、判決に納得できない会社側は、高等裁判所に控訴したようなので、結局判決は確定しておりません。

しかし高等裁判所の判決を待つまでもなく、60歳以降についても、それより前と同じ待遇を維持する動きは、大企業を中心に広がりを見せております。

例えば約2年前に野村證券は、国内営業を担当する正社員の定年の年齢を、60歳から65歳に延長し、65歳以降も最長70歳まで、再雇用すると発表しております。

また最近では食品スーパーのマルエツが、パートタイマーとして働ける年齢の上限を、70歳以上に延長すると発表しております。

このような動きが社会全体に広がった先に待っているのは、働く意思と健康な体があるうちは、いつまでも働くことのできる、生涯現役社会だと思うのです。

ただ生涯現役で働けるようになっても、社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入する年齢には、今のところは次のような上限があります。

また60歳以降も働くつもりならば、お得な働き方を選ぶため、この上限を知っていますか?
75歳まで働くと国民健康保険の保険料が軽減になります。

日本国内に住所を有する方は、本人の意思の有無にかかわらず、75歳以降は「後期高齢者医療制度」に加入する必要があるので、75歳が健康保険に加入する年齢の上限になります。

そのため自分と被扶養者になっている親族全員の「健康保険証」、または健康保険の自己負担の割合が記載された「高齢受給者証」を、会社に返却する必要があります。

親族全員の健康保険証を返却する必要があるのは、例えば妻が夫の健康保険の被扶養者になっている場合、夫が75歳になり、健康保険の被保険者の資格を喪失した時に、妻は健康保険の被扶養者でなくなるからです。

なお後期高齢者医療制度には、被扶養者という制度がないため、妻が75歳になり、後期高齢者医療制度に加入するまで、市区町村の窓口で手続きを行ない、国民健康保険に加入する必要があります。

また国民健康保険に加入すると、今まで納付する必要がなかった保険料を、納付する必要があるのです。

この負担を避けることはできませんが、例えば夫が後期高齢者医療制度に加入する前日において、健康保険の被扶養者だった妻は、国民健康保険の均等割額が5割軽減 (平成28年度は特例で9割軽減)され、所得割額がないという、軽減措置があります。

要するに保険料が安くなりますので、夫が75歳まで健康保険に加入できる環境にあるならば、加入した方が良いと思うのです。

またせっかく健康保険に加入するなら、妻だけでなく、失業中の子供や孫なども、健康保険の被扶養者にしてしまえば、こういった方が国民健康保険の保険料を納付する必要がなくなり、家計全体として節約になります。

なお健康保険の被扶養者にできる親族の範囲や収入などについては、協会けんぽのサイトの中にある、「被扶養者とは?」というページを参照して下さい。
妻が60歳になるまで会社を辞めない方が良い理由

自営業者やフリーランスなどが加入する国民年金は、原則として60歳になると、保険料を納付する必要がなくなります。

しかし会社員などが加入する厚生年金保険は、原則として70歳まで加入して、保険料を納付する必要があります。

もちろん保険料を納付した分だけ、厚生年金保険から支給される老齢厚生年金は増えていきますので、掛け捨てになることはありません。

納付した保険料は基本的に、退職により厚生年金保険の被保険者の資格を喪失し、1カ月を経過したときに、年金額に反映されることになっております。

ただ60歳から70歳を過ぎるまで、一度も退職しなかった場合には、65歳または70歳という節目の年齢に達した時に、老齢厚生年金の再計算が行われ、それまでに納付した保険料が、年金額に反映されるのです。

なおこの65歳というのは、例えば会社員の夫が厚生年金保険に加入して、その妻が国民年金の第3号被保険者になっているケースでも、重要な節目の年齢になります。

こういったケースでは通常、妻は国民年金の保険料を納付する必要はありません。

しかし夫が国民年金や厚生年金保険の保険料を原則25年以上納付し、老齢基礎年金の受給権を満たした状態で、65歳に達した時に、妻が60歳未満の場合、妻は第3号被保険者から第1号被保険者に変わるので、保険料を納付する義務が発生するのです。

もちろん夫が60歳から65歳になるまでの間に退職して、厚生年金保険の被保険者の資格を喪失した時に、妻が60歳未満であれば、同様の取り扱いになります。

ですから特に夫婦の年齢差が、5歳以上ある場合には、妻が納付する国民年金の保険料を少しでも減らすため、夫はできるだけ長く、厚生年金保険に加入した方が良いと思うのです。

なお妻が第1号被保険者に変わり、国民年金の保険料を納付する義務が発生したけれども、収入が年金のみになり、保険料を納付するのが難しいという場合には、保険料の納付の免除(全額、4分の3、半額、4分の1)を受けます。
まとめ

妻が60歳になるまでは
健康保険に加入する年齢の上限は原則75歳、また厚生年金保険に加入する年齢の上限は、原則70歳になります。

60歳以降は保険料の負担を避けたい、または在職老齢年金の仕組みによる、年金の支給停止を受けたくないと、社会保険に加入しない雇用形態を選ぶ方がいるかもしれません。

しかし社会保険に加入して保険料を納付すれば、上記のようなメリットがあるため、扶養にできる親族がいる方は特に、できるだけ長く加入した方がお得なようです。(執筆者:木村 公司より抜粋)