「朝型勤務」

「朝型勤務」

 20155月  時事通信より

 早朝から働き始め、夕方からは家族や友人との時間を楽しむ―。政府はこうした朝型の生活ス

タイルを「ゆう活」と名付け、「夏の生活スタイル変革」に乗り出した。長時間労働を抑制し、効率的な働き方を促すのが目的で、早速、霞が関の中央省庁で7~8月の期間、朝型勤務を実践

する。「明るい時間が長い夏の間は朝早くから働き始め、夕方には家族などと過ごすことができるよう夏の生活スタイルを変革する新たな国民運動を展開する」。安倍晋三首相は327の閣僚懇談会でこう宣言し、民間企業も導入するよう求めている

首相指示を受け、内閣官房は期間中、中央省庁で働く国家公務員の出退勤時間を12時間前倒しし、夕方以降の会議を禁止するなどの取り組み徹底を周知した。例年は8月末の来年度予算の概算要求の提出期限延長も検討する。

 ただし、ツイッターには、早出しても帰宅時間を前倒しすることは難しいと考え、「働く時間が増えるだけ」など長時間労働は減らないと悲観する声が多い。

だが朝型勤務への懸念は、それだけではないようだ。朝型勤務の導入に伴う主婦への影響を挙げている。

メリットとしてあげられているのは、次の3つだ。

・家族が早くに出勤するので、朝の時間にゆとりが出る

・夜はバラバラだった食事の時間が一緒に食事ができるようになる

・家族で会話する時間が増える

その一方で、(デメリット)

早朝に出ていく家族のために早起きをしないといけない。

パート勤務をしている場合、夫が早く帰ってくる夕飯の支度などがより忙しくなってしまう。

というデメリットもありそうだ。子育て中の共働き家庭にも、影響が出そうだ。朝型勤務導入に

よる保育所の問題もある。出勤時間が早くなると、子どもを受け入れる保育所もより早く開ける

必要が出てくるのだ。「女性の働きやすさ」が目的なのに・・・都心に通勤する親の多い千葉県の保

育所は、「うちはもう、これ以上早くは…」と困惑の表情を浮かべ、こうコメントしている。

「(現在の開園時間の)645分でも、通勤に1時間以上かかっている保育士さんは、家を5

時半に出て615分までには来ている。朝もいろいろ支度もあるので、これ以上(開園の前

倒し)は難しいですね」子どもを預けにきた母親も、「子どもも早く起きないといけなくなって、

だからといって夜そんなに早く寝かせられないので、ちょっと困ります」と不安げだ。

保育所の問題だけではない。では、子どもが小学生の場合は、「子供が登校するよりも先に、

親が出勤しないといけない」ことに触れ、「親が早起きをして出勤するということは、子供の生活パターンも見直さないといけないって事でしょ」と、子どもへも影響を及ぼすと釘を刺している。

政府の要望書は、朝型勤務のねらいとして「女性や高齢者が働きやすく、また、意欲と能力の

ある者が活躍しやすい職場環境を作ることで、労働生産性を上げて成長を持続させること」としている。

長時間労働を減らすという方向性自体は歓迎したいが、実際に導入するとなると、思わぬ場所に影響が出ることになる。

特に保育の問題を両立して解決しなければ、かえって子育て中の女性が働きにくくなることは確実だ。