賃金とは?

従業員の高齢化、高賃金化、従業員の意識の多様化、女性の職場進出の増大化、産業構造の転換、就業構造の変化等、企業を取り巻く環境は経済社会情勢の変化に伴い激しく急速に変化しています。
企業は、このような社会経済情勢の変化に迅速に対応できるように、それぞれの企業目的を最も適切に遂行してくれる従業員の採用、能力開発、配置・異動を行い、大いに能力を発揮してもらい生産性の向上を図らなければいけません。
企業にとっては、「採用、能力開発、配置・異動、能力発揮」といったサイクルを円滑に、効率的に、かつ経営方針に沿って展開させるために、従業員処遇制度をどのように整備するかが大きな課題となっています。

この処遇制度の中心が賃金です。一般に、従業員の労働条件は賃金だけではなく、労働時間、休日、休暇、企業福祉など多種多様なものがあります。
賃金管理の目的は、「賃金処遇の面から従業員の安定した豊かな生活と仕事に対する満足度を高めることにより、企業への帰属意識と働く意欲を高め、企業の維持と永続的な発展を図ること」にあります。
一方で、企業を維持し永続的な発展を図るためには、生産性向上が不可欠です。生産性の向上は、従業員の能力開発や能力発揮、そのための意欲の度合いなどにより左右されることが多いものです。
したがって、「賃金処遇は常に経営方針と一体となったものであること」が求められるます。

法律上は、労働基準法で賃金を次のとおり定義づけています。
「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」 (労働基準法第11条)
その他、退職金、慶弔見舞金などでも労働協約、就業規則、労働契約等で、あらかじめ支給条件が明らかなものは賃金とされています。

また、賃金を検討するための要素としては、次の3つがあります。
■ 企業活動の費用(賃金支払能力)
■ 従業員の生活費
■ 労働の対価
従業員からみれば、賃金は収入源である以上多ければ多いほど良いわけですし、企業からみれば、賃金は事業上、利益を得るためにかかる費用(コスト)である以上、少なければ少ないほど良いのです。

さらに、賃金を公正に決めるための要素としては、次の4つがあります。
■ 同一価値労働同一賃金
個々の従業員の賃金は、それぞれの従事する仕事の価値に応じて支払わなければならず、同じ仕事をしていれば同じ賃金を支払わなければならないというのが「同一価値労働同一賃金」の原則です。
■ 生活保障
従業員に一定水準以上の生活を保障しなければならないというのが「生活保障」の考えで、企業にとっては「労働力の再生産コスト」として捉えることができます。生活費への配慮が従業員の安心感をもたらします。
■ 世間相場
同業他社、同一職種と比較して遜色のない賃金を支払わなければならないというのが「世間相場」の考えで、労働力市場における人材獲得競争力を向上させ、人材定着につながります。
■ オープンな賃金制度
賃金がどのような基準で決定され、どのような基準で改訂されるのかを明確にして、従業員に公開することにより納得性が高まります。

企業が従業員の賃金処遇について考えていくうえで、このような賃金決定要素を抜きにして考えることはできないのです。
賃金の決め方は、高齢化の進展、産業構造の転換、就業構造の変化等、経済社会情勢の変化に伴い次第に変わってきています。 賃金は、ますます明確に、そして納得できるように決めなければならなくなってきています。